一般就労を目指しているけれど、「A型事業所から直接転職できるの?」「何を準備すればいいの?」と不安に思っている方は多いと思います。
この記事では就労継続支援A型(以下、A型事業所)から一般企業へステップアップするための具体的な流れや、よくある落とし穴、そして長く働き続けるためのサポートの使い方をわかりやすく解説します。
A型事業所と一般企業、どこが違う?
A型事業所で働いた経験は一般企業で働くための大切な土台になります。
しかし一般企業に移るときには、いくつかのギャップを事前に知っておくことが重要です。
スキルの種類と仕事のスピード
A型事業所では特定の作業を正確にこなすことが中心です。
一方、一般企業では次のようなスキルが広く求められます。
- パソコンスキル(メール・表計算・資料作成など)
- ビジネスマナー(電話対応・報告・連絡・相談)
- 仕事全体の流れを理解する力
スピードの面でも大きな差があります。
自分で考えて動く力
A型事業所では困ったらすぐに支援員さんに相談できます。
しかし一般企業では、ある程度自分で判断して動くことが求められます。
たとえば、問題が起きたとき「〇〇を試したけどうまくいかなかったので、次は△△をしてみたい」というように、自分で考えて提案する姿勢が大切です。
はる考えてもわからないときは事前に要点をまとめて、周りの人に尋ねましょう。
体調管理とストレスへの対応
一般企業では安定して出勤できることが採用の大きな判断基準になります。
一般企業でも合理的配慮は求められますが、A型事業所とは支援体制や相談のしやすさが異なるため、必要な配慮を自分で整理して伝えることが大切です。
業務の変化や人間関係のストレスに対して、ある程度柔軟に対応できる力も必要です。
一般就労へ移行するための2つのルート
A型事業所を利用している人が一般就労を目指す方法は、大きく2つあります。
ルート1:A型事業所に通いながら就職活動する
給与をもらいながら求職活動ができるので、経済的に安定しやすいのがメリットです。
ただし、勤務時間外に活動することになるため、体力的・時間的な負担は大きくなります。
A型事業所での業務経験そのものが職歴として評価されることもあり、ブランクをつくらずに次のステップへ進みたい人には有効な選択肢です。



働きながら自己理解を深められる点がいいですね。
ルート2:就労移行支援を経由して転職する
就労移行支援では、模擬面接・職場実習・履歴書の添削など、就職に特化した専門的なサポートを受けられます。
デメリットとして利用中は原則として賃金が発生しないため、収入が途切れる期間ができます。
貯金や失業保険、障害年金などで生活費を確保しましょう。
職員と一緒に自己分析や職場定着の準備をじっくり進められるため、長く働ける職場に出会いやすいのが強みです。



ミスマッチによる早期離職を防ぎたい方や、初めての障害者雇用に挑む方に向いています。
一般就労に向けた4つのステップ
ここからは一般就労に就くための手順を次の4つのステップで解説します。
ステップ1:自分の特性を整理する
ステップ2:支援員に意向を伝えて準備を始める
ステップ3:求職活動を進める
ステップ4:就職後も定着支援を活用する
ステップ1:自分の特性を整理する
得意なこと・苦手なこと・ストレスを感じやすい場面を書き出してみましょう。
自己理解を深めることで、自分に合った職場や仕事内容を選びやすくなります。
でも得意なことってなかなかすぐには出てこないですよね。
得意なことを出すコツは”過去のうまくいった経験を具体的に書き出す”ことです。
たとえば、「ブログ記事を書いていて、調べ物が楽しくて気づいたら3時間経っていた」「人から〇〇をよく頼まれる」などです。
小さなことで十分なので成功体験を具体的に言葉にしてみましょう。
ステップ2:応募書類の準備を始める
”障害者雇用で就職する”など目標をハッキリさせて、履歴書・職務経歴書の作成を始めましょう。
障害者雇用か一般雇用かで配慮事項記載の有無などが変わるためです。
自分1人では書類を書くのが不安。
そんな人は、
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワークの障害者窓口
で、履歴書・職務経歴書の添削をしてもらいましょう。



どちらも無料で利用でき、A型事業所と併用可能です。
生活面の相談もあわせてしたい場合はなかぽつ、求人紹介とセットで進めたい場合はハローワークが向いています。
ただしハローワークは応募先が決まったうえでの履歴書添削となることがあります。
ステップ3:求職活動を進める
以下のような方法で求人を探せます。
- ハローワーク(障害者専門の窓口あり)
- 障害者向けの求人サイト(dodaチャレンジ・アットジーピーなど)
- 企業見学・職場実習で雰囲気を確かめる
実際に職場を見ることで、自分には働けそうかをリアルに判断できます。
1人での就活が不安なら、あなたが利用しているA型事業所のスタッフ、障害者就業・生活支援センターに協力してもらえるようお願いしてみましょう。
ステップ4:就職後も定着支援を活用する
就職がゴールではありません。
新しい環境に慣れるまでのサポートを使うことで、長く安心して働き続けられます。
具体的にサポートしてもらえるところと特徴は以下です。
- A型事業所による定着支援:就職して最初の6ヶ月
- 就労定着支援事業所:就労移行支援事業所による併設運営が中心的なモデル
- 障害者就業・生活支援センター:就労移行支援や就労定着支援のような利用期間の上限は設けられていない
合理的配慮のお願いの仕方
一般企業で安心して働くためには、自分の障害特性を適切に伝えて「合理的配慮」を求めることが有効です。



合理的配慮を求めることは「わがまま」ではなく、障害者雇用促進法に基づいた正当な権利です。
具体的な配慮の例
「静かな場所で作業させてほしい」
「定期的に短い休憩を取らせてほしい」
「口頭の説明だけでなく、マニュアルも一緒に見せてほしい」
自分の言葉で具体的に伝えられるよう、事前に準備しておくと安心です。
オープン(開示)とクローズ(非開示)のメリット・デメリット
オープン(開示)とクローズ(非開示)のメリット・デメリットは以下の表のとおりです。
| メリット | デメリット | |
| オープン | 周囲の理解を得やすい。早めに相談できる。 | 偏見を持たれる可能性がゼロではない。 |
| クローズ | 障害を意識されずに働ける。 | 配慮を期待できず、全て自己管理が必要。 |
どちらを選ぶかは本人の自由です。自分の状況や職場の雰囲気をふまえて考えてみましょう。
就職後の不安を解消する「就労定着支援」
一般就労を始めた後に使えるサービスとして、「就労定着支援」があります。
サポートの内容は以下です。
- 定期的な面談:仕事の悩みや体調の変化を一緒に確認
- 企業との橋渡し:業務量の調整や人間関係の問題を支援員が間に入って解決
- 早めの対処:問題が大きくなる前にサポート
利用できる期間は、就職後7か月目から、要件を満たせば就労定着支援を最長3年間利用できます。
就職して最初の6か月は元の事業所から支援を受けられます。
利用期間(最大3年6ヶ月後)後にも、引き続き支援が必要であると支援者が判断した場合は継続できます。
就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護、自立訓練サービスを経て一般就労をした方が対象です。
所得に応じて1割の自己負担が発生する場合があります。



「就職したあとも誰かに相談できる場所がある」という安心感は、長く働き続けるうえでとても大切です。
A型事業所を最大限に活かす5つのコツ
A型事業所の利用中から一般就労を意識した過ごし方をすることで、一般就労への移行がずっとスムーズになります。
具体的には次のようなことをA型在籍中から意識しましょう。
- 障害年金などと組み合わせる:収入源を複数持っておくと経済的に安定する
- 自分でスキルアップする:オンライン講座や資格取得など、事業所の外でも学ぶ
- 仕事の全体像を意識する:「なぜこの作業をするのか」を常に考える習慣をつける
- 仲間と情報交換する:同じ境遇の人との交流は生活や仕事のヒントになる
- 定期的に目標を見直す:居心地の良さに慣れすぎず、将来のキャリアを振り返る時間をつくる
よくある質問
Q1.一般就労に失敗したらどうなるの?
一般就労がうまくいかなかった場合でも、個々の状況や自治体の判断により、A型事業所や就労移行支援の利用を再検討できる場合があります。
失敗を恐れず焦らず、自分のペースで進めることが大切です。
Q2.A型事業所を利用するリスクはある?
以下のような点には注意が必要です。
事業所の閉鎖リスク:国の報酬制度の見直しにより、事業所の経営が厳しくなるケースがある
スキルが停滞する可能性:単調な作業だけを繰り返していると、一般就労に必要なスキルが身につかない
収入の少なさ:最低賃金は保証されているが、勤務時間が短いと手取りが少なくなる
まとめ
A型事業所は一般就労に向けた土台をつくれる場所です。
しかしA型で身につけるスキルだけで一般企業に通用するかというと、正直なところ追加の努力が必要です。
大切なのは自分の特性を理解したうえで、支援機関と一緒に計画的に準備を進めること。
合理的配慮や就労定着支援をうまく活用すれば、一般就労後も安心して働き続けられる環境を整えることができます。
1歩ずつ着実に進めていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。






